「医療保険は不要」は本当か…?
行く先見えぬコロナ禍。節約、投資、等々、お金の動かし方についての意識が、世間では高まっていると感じます。
筆者フライパン猫の周辺では、ここ半年くらいで気になる動きがありました。知人二人が相次いで、医療保険・生命保険を解約したというのです。

日本には恵まれた健康保険制度があるし、
わざわざ民間の保険に入る必要はないでしょ

若いうちに病気をするリスクなんて、そもそも低いから。
保険にお金をかけるくらいなら、投資でお金を増やして備えたほうが良いよ
You〇ubeなどで金融系インフルエンサーさんがおっしゃるのを聴いて、行動に出たんだな、と。筆者としても、ふむふむ、確かに、その通り!お金の賢い運用は大事!と思います。
ただ、一方で、(自分で言うと変な感じだが)若くして難病にかかった身として、いや現実はもうちょっと厳しいけど大丈夫そ…?とも思います。
今回は、働き盛りのタイミングで病気になってしまった人の、当事者だからこそわかる「もうちょっと厳しい現実」をお伝えしたいと思います。
断っておきますが、この記事は、「だからあなたも保険に入りなさい!」というものではありません。
まさかの坂があったときに、どんな状況に見舞われるか。その一例をここで情報として提供し、皆さんが「あれ…思ってたんと違う…」となるのを未然に防げたら、と思うわけです。
いきなり結論
もうここでまとめに入りますが、筆者がこの記事で言いたいことは三つです。
・自由に動かせるお金(数百万円)を常に用意しておけよ
・それが無理なら保険もちゃんと検討しなよ
・健康への投資を惜しむなよ
一項目ずつ詳しく書いていきます。
自由に動かせるお金(数百万円)を常に用意しておけよ

病気になったときに必要な「ガチの」お金はいくら?
医療保険不要論を唱える知人は言います。

健康保険に入っていれば、どれだけ入院・治療しても10万円くらいで済むんでしょ?
働けなくても、傷病手当金がもらえるし。そんなに困ることはないよね
これは本当なのでしょうか?
筆者の意見は、「本当です。でも、それだけじゃ済まないよ」です。
もちろん、病気や治療の種類、期間などによって異なりますが、実際に動くお金は、10万円どころか数百万円程度と考えたほうが良いでしょう。え、まじで?
健康保険だけで十分、は本当?
「健康保険に入っていれば、どれだけ入院・治療しても10万円くらいで済むんでしょ」
これは高額療養費制度のことですね。その月内の医療費が高額になった場合に、「今月はこれ以上払わなくていいですよ!」と上限がつきます。
筆者もこの制度を利用した一人です。初入院時は、おかげで一か月8万円ほどの負担で収められました(上限額は収入によって異なります)。泣くほどありがたかったです。
が、これは「一か月」の金額です。
上限はあくまでその月内の上限で、翌月からはまたお金がかかります(30日たったら、でなく、カレンダー上で翌月になったら、という点に特に注意です)。
そして、これはあくまで「医療費」のはなし。
入院中提供される食事代、ベッド代等は別途必要です。
筆者の場合、医療費とは別に7万円ほどかかりました。筆者は大部屋で過ごしましたが、個室を希望するならここに部屋代×日数分かかります。入院着などをレンタルする場合は、その費用もかかります。上限の対象にならない出費も結構あるのです。
上にリンクを貼った記事に、入院時の出費をもう少し詳しく書いていますので、参考にしてください。
傷病手当金で生きていける、は本当?
「働けなくても、傷病手当金がもらえるし。そんなに困ることはないよね」
病前の筆者は、正社員フルタイム勤務。発病後、免疫治療のため1年以上休職し、再発が続いたため退職しました。
休職~再就職まで、傷病手当金を受給しています。

めっちゃ赤裸々に、当時の年収を告白します。
病前は年収450万円、月収30万円、税引き後手取り25万円ほどでした。
傷病手当金でもらえたのは月20数万円。税引き後、手元に残るのは15万円ほどでした。
税金の額は、フルタイム勤務時の前年収入をもとに計算されるので変わりません。
月収にして10万円、年収だと150万円以上変わりました。
3分の2以下になった手取りで、どう生活するか?
皆さんの手取り額に当てはめて、ちょっとイメージしてみてください。
今と同じ生活、できそうですか?
傷病手当金のおかげで、働けない間も生活を続けることができました。こんなにありがたいことはありません。
ただ、「傷病手当金で保障されるのは、“最低限の生活”であって“病前と同等水準の生活”ではない」という点は確認しておきたいです。そこに不満を言うなんてわけではなく、その認識が皆さんにあるかどうかを問うために書いています。
病気は「その時」だけでおわらない
病気は、入院して、治療して、はいおしまい、ではない場合が多いです。
そいつは常に付きまとい、じわじわ家計を圧迫します。支出を増やし、収入を減らしにかかります。
【支出が増える】
通院代、検査代、治療代、薬代。職場や役所に提出する診断書代、等々。
筆者の場合は、特に薬代が高額になり驚きました。普段目にする風邪薬などとは桁の違う金額に、「こんなに高い薬があるのか…」と。病気になるまで知らなかったことです。
【収入が減る】
病院に通う時間が増えれば、勤務時間がその分減ります。
通院、入院を繰り返すなら、正社員やフルタイム勤務が難しくなることがあります。
後遺症が続けば、体力的にも長時間労働が厳しくなることがあります。
「自由に動かせる」お金が数百万円はあるべき
以上、筆者の場合は、
・「最初の治療費」は10万円以下で済んだが、その他の出費も多く、トータル15万円以上かかった
・年収は150万円以上下がった
・通院費で毎月万単位のお金が飛ぶ
という現実がありました。
動いているお金は、実に数百万円です。
病気になって痛感しました。病気とお金は、切っても切れない。症状だけに意識を向けたいのに、どこかしらお金のことがちらつくんです。筆者は思いました。

日本の健康保険は素晴らしい制度だ…
でも、不安なく病気に備えたければ、数百万円は自由に動かせる(※総資本額でなく自由に動かせる)お金があったほうがいい
↑が無理なら保険もちゃんと検討しなよ

逆に今、手元に数百万円の自由に動かせるお金があるのなら、たとえ大病をしても、ひとまず当座はしのげるでしょう。安心してよいと思われます。
そのお金がない場合は、現在と同等の生活水準を保つのが難しくなる可能性があります。
「治療が受けられない!」「明日の飯も食えない!」なんてことはありません。最低限度の生活がきちんと保障されるのが日本です。すごい。
そして、そのラインで生活を送ることを把握している(許容できる)のであれば、わざわざ大金をこさえる必要もないでしょう。
しかし、すぐに動かせるお金がない、一方、生活水準も落としたくない、という場合。
そんな時に、月々手ごろな価格で備えられるのが医療保険です。
たとえある程度の資産があっても、「今まで頑張って積み立ててきたものを、ここで切り崩すなんて……」「将来のことを考えると、今このお金を使うのは……」等、チキる自覚がある場合も、保険を検討してよいでしょう。保険はこういう時に、ドーンとお金を出してくれます。
保険=無駄な出費、と切り捨てる前に、現状をよく鑑みた上で、きちんと選択肢の一つとして検討することをお勧めします。
保険の見直しは適宜必要
ただし、その保険は本当に自分を助けてくれるのか?必要なとき必要なお金を惜しげもなくくれるのか?その点をきちんと見極めておくこと。これは超々重要です。
まずは加入している保険の条件をよく見直し、内容をきちんと把握しましょう。ライフステージが変わるごとに、適宜見直す必要があります。
その上で、コースを変えるのか、乗り換えるのか、解約するのか、等を判断しましょう。

健康への投資を惜しむなよ

保険は無駄→健康への投資は無駄、となっては危険
そうはいっても、やっぱり若いうちから、なると決まったわけじゃない病気に備えるだなんて…。というご意見。
全くその通りです。筆者のような例は少数派で、多くの若者は大病などせずに定年まで働き続けられるのですから。いいなぁ~~…(←本音)
なので、少数派のたわごととして聞いてください。
ここからは皆さんの価値観を問います。
皆さん、自分の健康のために、どれくらいお金を払えますか?
いざというときに、自分の身体にいくら払えます?
当該のインフルエンサーさんらもそうは言っていないのですが、しかし、「無駄な固定費を削減する」ことに固執するあまり、「健康へかけるお金が無駄」と捉え違いをしていないか。筆者が最も懸念する点はそこです。
健康な身体こそ最強の資本
筆者の知人が良くない例かもしれませんが、「医療保険は無駄!低リスクな事象への備えは無意味!無駄な固定費は削減!」と言う人こそ、好きなものを好きなだけ食べて、脂っこいものや塩分も気にせずバクバク食べて、お酒もガブガブ飲んでいませんか?
健康診断でひっかかっても、「いつものことだから」「若いうちは平気だから」と放置していませんか?
素人が何を言っとんじゃ、と思われることを承知で書きますが、こういう人を筆者は“金融意識が高い人”だとは思えません。
未来のより良い自分のために、今、正しくお金を使える人のこそ、“金融意識の高い人”だと思います。
投資先の優先順位として、「自身の健康」は上位であるべき項目ではないでしょうか?
健康な体は最強の資本。健康な身体が無ければ、お金を稼げません。稼いだお金を使えません。手元に何十億あったって、寝たきりでは恩恵をあずかれません。
一度失った健康は、いくらお金を払ったって返ってこないんです。
未来のお金のために投資するのは結構ですが、未来の健康のために、今、自分の体に投資しておこうと、どうして思わないのでしょう。
そのお金は、決して無駄ではありません。
そして医療保険とは、高い健康意識の、その延長線上に存在するものです。
健康について知れば知るほど、その脆さと儚さに気付きます。「まさか」が無いに越したことはない。でももしあったら?そのために今できる備えをしておこう。よりよい未来のために。
その思考は果たして、ハナから無駄と切って捨てられるほど軽いものでしょうか?
まとめ

・日ごろから健康への意識を高め、自分の身体にきちんと投資しよう
・病気に備えるなら、数百万円あると、闘病中ひやひやしない
・↑が手元に無い間は、医療保険で備える、というのも立派な手段の一つ。保険の内容はきちんと把握しようね
という内容でした。
なんにせよ、元気!長生き!お金持ち!が最強ですよね。筆者も何とかそこに食らいつけるよう(※まだ諦めていない)何卒がんばるんで、お互い素敵な未来で会いましょうね!

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